ASAHIZA 人間は、どこへ行く
監督:藤井光 2013年 | 74分 | カラー | ブルーレイ
製作:ASAHIZA 製作委員会(文化なしごと人 コンソーシアム [一般社団法人コミュニティシネマセンター / 合同会社tecoLLC / NPO 法人20 世紀アーカイブ仙台 / 有限会社コンテンツ計画 / ジャパン・フィルムコミッション] )、朝日座を楽しむ会
配給:一般社団法人コミュニティシネマセンター
支援:公益財団法人アサヒグループ芸術文化財団

 

 

朝日座は、福島第一原発から30km圏内、福島県南相馬に大正12年関東大震災の年に開館した木造劇場です。当初は芝居小屋として、そして映画館として、街の人々から親しまれましたが、街の衰退とともに閉館。 しかし、人々は、この劇場の歴史をしらべ、手入れをして映画上映や公演などに活用しながら、映画館として再生を模索してきました。そんな時、大震災とともに、原発事故がおこります。静かな地方の街は、この街までは人が日常を暮らすことができる、できない、暮らせると暮らせないを隔てる国境の街になっていたのです。

 

この映画は、地震や原発事故についての映画ではありません。朝日座という劇場をめぐる人々の記憶をたどるドキュメンタリーです。何代もつづく商店があり、戦国時代から江戸にかけての騎馬武者の歴史を色濃く残す土地に暮らす人たち。そうした土地に根付いた人たちの暮らしにカメラは入り、朝日座についてのインタビューを行います。そしてまた、南相馬を離れた大きな街で暮らす若者たちにも、カメラを向けます。原発で移住したもの、震災とは無関係に街に出たもの。

 

そして、朝日座について語る人々を撮影した映画を、朝日座で上映します。映画に出演した人々やその家族、友人たちなど南相馬の人々に加え、東京からバスに乗って、朝日座と南相馬周辺を見学するツアーの人々が合流して、上映会が行われます。

 

朝日座という劇場についての映画を通じて、朝日座に、人々が集まる。それは、インタビューで語られる往年の映画館の賑わいを思わせる瞬間でもあります。歴史をもった映画館は、きびしい現実のただ中にある人々にとって、映画や街の記憶で人々の心を繋ぐ特別な場所であり、これからの人々の未来を照らす灯台のようでもあります。

 

ASAHIZAという映画を通じて、朝日座というひとつの劇場、南相馬という地域から、日本の、そして、人間の未来は、どこに向かうのか。答えのない問いかけが、この映画のすべてのディテールに内包されています。

 

立木祥一郎 『ASAHIZA 人間は、どこへ行く』プロデューサー

 

 

朝日座とは

芝居小屋兼活動写真館として「旭座」という名称で1923年に開館する。町のシンボル的な存在であったその建物は町の中心に佇み、歌舞伎・映画だけでなく、町民の発表の場として賑わう。1952年に名称を「朝日座」に改め、映画全盛の時代には年間入館者数が20万人を超える。その後、テレビ放映の普及、レンタルビデオショップの増加など流通の多様化の影響を受け、徐々に入館者数は減少していく。1991年に閉館してからも「朝日座を楽しむ会」が定期的に上映活動を続けている。
朝日座を楽しむ会 http://asahiza.blog.shinobi.jp