WISEMAN × USA
フレデリック・ワイズマン監督最新作『パリ・オペラ座のすべて』公開記念
ワイズマンを見る/アメリカを観る
― アメリカ社会の偉大なる観察者、フレデリック・ワイズマンの世界。

【会期】2009年9月12日(土)〜25日(金) 【会場】ユーロスペース

上映作品プロフィ−ル上映スケジュール料金会場

『エッセネ派』(1972)、日本初公開!

伝説の問題作『チチカット・フォーリーズ』(67)、日本初公開作品『エッセネ派』(72)、上映時間6時間に及ぶ超大作『臨死』(89)、華麗なる『BALLET アメリカン・バレエ・シアターの世界』(95)…。巨匠ワイズマンが見つめ続けた現代アメリカの現実虚構(リアリティ・フィクション)。怒涛の18作品一挙上映!

主催:ユーロスペース/コミュニティシネマセンター
特別協力:Zipporah Films
協力(予定):特定非営利活動法人山形国際ドキュメンタリー映画祭/なみおかシネマテーク/弘前大学医学部/角川映画株式会社

1967年の『チチカット・フォーリーズ』以来、“現代社会の観察者”として独自の映像表現を展開し続けているドキュメンタリー作家フレデリック・ワイズマン、40数年にわたり、学校、病院、警察、軍隊、裁判所、福祉施設、議会など、アメリカの様々な施設・組織を撮り続けてきた。
ワイズマン自身が“〈われわれの生活様式の博物誌〉を紹介するドキュメンタリー・シリーズ”という作品群には、悲劇的であると同時に喜劇的、深刻でありながら滑稽でもあり、複雑であると同時に素朴(ナイーヴ)、絶望の中にもユーモアが光る、矛盾に満ちた魅力的な被写体でありつづける“アメリカ”が映し出される。

上映作品 全作品16ミリ/日本語字幕付
『チチカット・フォーリーズ』 Titicut Follies
1967/84min./白黒

マサチューセッツ州ブリッジウォーターにある精神異常犯罪者のための州立刑務所マサチューセッツ矯正院の日常を克明に描いた作品。収容者が、看守やソーシャル・ワーカー、心理学者たちにどのように取り扱われているかが様々な側面から記録されている。合衆国裁判所で一般上映が禁止された唯一の作品であり、永年に渡る裁判の末、91年にようやく上映が許可された。

『高校』 High School
1968/75min./白黒

フィラデルフィア郊外にある“模範的な”高校の日常を追っている。朝のホームルーム、授業の風景、生活指導、父母を交えた進路相談、男女別に行われる性教育や家庭科の授業、クラブ活動……。高校を構成する教師、生徒、親、管理職たちの関わり合いの中で、イデオロギーや価値観が醸成され、伝えられていく様が映し出される。

『法と秩序』 Law and Order
1969/81min./白黒

ミズーリ州カンザス・シティの、最も犯罪率の高いアドミラル・プールヴァール管轄区にある警察の様々な活動を追っている。売春の摘発、犯罪を繰り返す未成年犯罪者や拳銃を所持する窃盗犯の逮捕など緊迫した状況を追う一方で、老女のバッグ探しや迷子の保護、養育権をめぐる夫婦のいさかいの仲裁など、市民生活のあらゆる側面に関わる警察の活動をとらえている。

『病院』 Hospital
1970/84min./白黒

ニューヨーク市ハーレムにある大きな都市病院メトロポリタン病院の活動を、主に緊急棟と外来患者診療所での医師と患者のやりとりに焦点を当てて撮影した作品。都市病院に運びこまれる様々な患者とその処置をする職員の姿を通して、都市が抱える多くの問題を浮き上がらせる。

『エッセネ派』 Essene
1972/89min./白黒

ベネディクト会エッセネ派の僧院の日常を追う。1967年以来、病院、高校、警察、軍隊といった組織からアメリカ社会をみてきたワイズマンが宗教組織にカメラを向ける。個人の要求と組織としての論理の対立、信仰の問題など、日々の生活の中で修道士たちが対処しなければならない数々の問題が浮かび上がる。規則、労働、信仰、価値、愛、そして祈り、修道士たちが直面する問題は、組織というものが抱え込まざるをえない共通の問題であることがみえてくる。

『霊長類』 Primate
1974/105min./白黒

霊長類に関する生物医学的、行動学的研究における先駆的な施設として知られるヤーキーズ霊長類研究所で撮影。猿を使った様々な動物実験が、その研究の目的や意義は殆ど説明されないままに、次々と映し出される。虐待と見誤りかねない数々の実験の映像は、故意に研究所を貶めたとする人々と、生体実験に反対する人々との間に激しい議論を巻き起こした。

『福祉』 Welfare
1975/167min./白黒

ニューヨーク市のウェイヴァリー福祉センターを舞台に福祉行政のありようを描いた作品。住宅問題、失業問題、医療問題、幼児虐待などの児童問題、老人問題など、多様な問題と係わる福祉システムの性質を検証し、福祉活動家の置かれている状況、受益者の問題、福祉の本質などを浮かび上がらせる。

『肉』 Meat
1976/113min./白黒

野の草を食む「牛」はいかにして「肉」となるか。牛がトラックで牧場の外へと連れ出されてから、巨大精肉工場で製品化され、市場に送り出されていくまでの全工程を記録する。「牛」が徹頭徹尾「肉」として扱われるこの場所で、無数に細分化された各工程が一分の狂いもなく進行する過程を映し出す。

『軍事演習』 Manœuvre
1979/115min./白黒

東西対立時代に毎年行われていたNATOの秋季大演習に密着取材しその全貌を記録したもの。この作品の撮影が行われた1978年の演習は北極海から地中海までの加盟国全域に渡って大演習が繰り広げられたが特に演習が集中したのは旧東ドイツとの国境近くで、当時、第三次世界大戦を想定したデモンストレーションと見なされ、国際的に大きな波紋を呼んだ。

『モデル』 Model
1980/129min./白黒

ニューヨーク市でも最高のモデル事務所であるゾリ・マネージメント社を舞台に、CMやファッション・ショー、雑誌、広告写真、デザイナーズ・ブランドなどの仕事をする男女のモデルたちを追っている。彼らを取り巻くカメラマンやエージェント、撮影スタッフやデザイナーなどの姿を通してファッション・ビジネス界のありさまが描かれている。

『ストア』 The Store
1983/118min./カラー

1907年の開店以来、高級百貨店として揺るぎない地位を築いてきたニーマン=マーカス百貨店テキサス州ダラス本店。1982年のクリスマス・シーズンにおけるニーマン=マーカスを舞台に、訪れる客や接客する従業員、華やかな売場の舞台裏で働く人々の姿が映し出される。

『聴覚障害』 Deaf
1986/164min./カラー

アラバマ聾盲学校(AIDB)を取材した「Deaf and Blindシリーズ」第二部。聾学校で寄宿生活を送る子供たちの記録。口頭での会話、聴覚補助、読唇術、筆読などと手話を組み合わせて使うトータル・コミュニケーションによる教育、心理カウンセリング、通常の学科の授業、職業訓練やレクレーションなど、この学校の中で行われる様々な活動が記録されている。

『臨死』 Near Death
1989/358min./白黒

ボストンのベス・イスラエル病院特別医療班についての映画。尊厳死、植物人間、脳死、インフォームド・コンセント、インフォームド・チョイスなど死と生の境界をめぐる末期医療の新しい問題を臨床現場から掘り起こした6時間に及ぶ超大作。ハーバード大学の付属機関であり先端の医療技術を誇るこの病院の集中治療棟で行われる生命維持装置を使った診療をめぐり、患者と医者が直面する現実に多角的に迫っている。

『BALLET アメリカン・バレエ・シアターの世界』 Ballet
1993/170min./カラー

1992年のアメリカン・バレエ・シアターの活動を記録した作品。前半はスタジオでのリハーサル風景やバレエ団の運営に関わる活動を、後半はアテネ公演、コペンハーゲン公演の様子を追っている。作品を完成させるために繰り返される振付家とダンサーたちのリハーサルの様子や、アクロポリス、コペンハーゲン国立劇場という荘厳な舞台での華麗な公演風景は見るものを魅了する。

『メイン州ベルファスト』 Belfast, Maine
1999/247min./カラー

メイン州にある人口6000人の典型的なアメリカの町ベルファスト。現在ではメイン州でもっとも貧しい地区の一つであるが、歴史的には商業的に栄えた町であり、天然資源に恵まれた土地でもある。ワイズマンは「ベルファストの日常生活が経済的圧力によっていかに変化したかあるいは変化していないかを記録しようと考え、この町の様々な組織とそこでの日常生活を検証した」と述べている。

『DV—ドメスティック・バイオレンス』 Domestic Violence
2001/195min./カラー

フロリダ州最大のDV被害者保護施設「スプリング」は年間1,650人もの成人と子供を受け入れている。経済的抑圧、精神的・肉体的虐待、性的虐待……。加害者は故意に被害者を傷つけ、支配しようとする。なぜ家族がお互いを傷つけあうのか、なぜ犠牲者は傷つけられることを許してしまうのか。映画に映し出される現実はたびたび我々を驚かせ、この問題について我々が抱いているステレオタイプを覆していく。

『DV 2』 DV2
2003/160min./カラー

前作が被害者救援施設を舞台に、主にDVの被害者の立場から話が展開していたのに対し、本作では視点をDVの加害者側に移している。法廷で様々なDVのケースが処理されていく。当事者同士の接触をさせないため、加害者はモニターに映し出されるだけの法廷。何組もの被害者と加害者が同席し、その中で審理が進められていく法廷。延々と映し出されるいくつもの裁判。法廷審理から彼らの人生とドラマが浮かび上がる。

『州議会』 State Legislature
2006/217min./カラー

アイダホ州、州議会の日常を追う。壮麗な州議会の建物の中では、校内暴力、狂牛病、間接喫煙の規制緩和、電話料金等々、多様な問題を扱う様々な委員会が行われている。委員会には議員だけでなく、ロビイスト、それぞれの問題の専門家や関係者、一般の市民も参加する。様々な課題をめぐり果てしなく続けられる議論の合間に、州議会を見学に訪れる子どもたち、ロビーで行われるコンサートの模様などが挿入される。

プロフィール

フレデリック・ワイズマン Frederick Wiseman

1930年生まれ。イェール大学大学院卒業後、弁護士として活動を始める。やがて軍隊に入り、除隊後、弁護士業の傍ら大学で教鞭をとるようになる。63年にシャーリー・クラーク監督作品『クールワールド』をプロデュースしたことから映画界と関係ができ、67年、初の監督作となるドキュメンタリー『チチカット・フォーリーズ』を発表。マサチューセッツ州で公開禁止処分となるが、その後も社会的な組織の構造を見つめるドキュメンタリーを次々と制作する。71年に現在も拠点とする自己のプロダクション、ジポラ・フィルムを設立。以後、劇映画『セラフィータの日記』(82)『The Last Letter』(02)をはさみ、精力的にドキュメンタリーを作り続けている。「現存の最も偉大なドキュメンタリー作家」と称される。

上映スケジュール

■全作品日本語字幕付 ■各回入替制

9月12日(土) 14:00 16:00 17:45
「チチカット・フォーリーズ」 「高校」 「福祉」
9月13日(日) 13:30 15:30 17:30
「法と秩序」 「病院」 「BALLET アメリカン・バレエ・シアターの世界」
9月14日(月) 14:00 16:00 18:30
「エッセネ派」 「霊長類」 「肉」
9月15日(火) 13:30 16:00 18:40
「軍事演習」 「モデル」 「ストア」
9月16日(水) 14:00 19:00
「メイン州ベルファスト」 「チチカット・フォーリーズ」
9月17日(木) 14:30 18:00
「DV−ドメスティック・バイオレンス」 「DV2」
9月18日(金) 14:00 17:00
「聴覚障害」 「州議会」
9月19日(土) 14:00
「臨死」
9月20日(日) 14:00 17:30
「BALLET アメリカン・バレエ・シアターの世界」 「DV−ドメスティック・バイオレンス」
9月21日(月・祝) 14:00 17:00
「DV2」 「州議会」
9月22日(火・祝) 14:30 16:30 18:30
「法と秩序」 「高校」 「肉」
9月23日(水・祝) 14:30 16:30 18:30
「病院」 「チチカット・フォーリーズ」 「エッセネ派」
9月24日(木) 13:30 16:40 18:40
「福祉」 「霊長類」 「ストア」
9月25日(金) 14:00 16:30 19:00
「軍事演習」 「モデル」 「エッセネ派」
料金(各回入替制)
前売券 1回券 3回券
1,300円 3,600円
  • 前売券はチケットぴあでお求めください。Pコード:461-095(1回券・3回券共通)
  • 前売券はご鑑賞当日、劇場窓口にて入場整理番号とお引換えください。
当日券
(1回券のみ)
一般 大学生
専門学校生
会員
シニア
高校生 中学生以下
1,500円 1,300円 1,100円 800円 500円
  • 9月19日『臨死』は当日券のみの発売。いずれも2000円。

※各回入替制・整理番号順入場・自由席
※やむをえない事情により作品及び上映時間が変更される場合がございます。

会場
ユーロスペース

[住所] 渋谷区円山町1‐5(渋谷・文化村前交差点左折)
[電話番号] 03-3461-0211
[ホームページ] http://www.eurospace.co.jp/

フレデリック・ワイズマン監督最新作
『パリ・オペラ座のすべて』今秋公開!
今秋、渋谷・Bunkamura ル・シネマほか全国ロードショー http://www.paris-opera.jp/

コミュニティシネマセンターではフレデリック・ワイズマン監督作品の貸出も行っています。詳しくはこちら