監督・脚本:マノエル・ド・オリヴェイラ
撮影:アカシオ・ド・アルメイダ
出演:マリア・ド・サイセット、マヌエラ・ド・フレイタス、ペドロ・ピニェイロ
長篇劇映画第三作。ヴィンセンテ・サンチェスの同名戯曲を監督が自ら映画用に翻案。『フランシスカ』に至る「挫折した愛の四部作」の第一部にあたる。現在の夫に心を開かず、事故死した最初の夫への想いを募らせる妻ヴァンダを中心に、過去と現在、死者と生者の間を交差する奇妙な愛が描かれる。
1988年/101分/カラー
監督・脚本:マノエル・ド・オリヴェイラ
撮影:マリオ・バローゾ
出演:ルイス・ミゲル・シントラ、レオノール・シルヴェイラ、ディオゴ・ドーリア
『過去と現在』から音楽を担当してきたジョアン・パエスとともに作られたオペラ・ブッファ映画。厳かに進行する貴族たちの晩餐会は、やがて、タイトルが予告する驚愕の食人場面へ。人間と動物、人間と機械、見せかけと本質……ヴァイオリンの調べに乗ってあらゆる境界が軽々と犯される。
監督・脚本:マノエル・ド・オリヴェイラ
撮影:イワン・コゼルカ
出演:マリア・ド・メデイロス、ミゲル・ギリェルメ、ルイス・ミゲル・シントラ
「精神を病める人々」の表札が掲げられた邸宅で、アダムとイブ、キリスト、ラスコリーニコフ、 ニーチェのアンチ・キリストら歴史的文学作品の登場人物たちが、信仰と理性と愛についての議論を戦わせる。西洋古典の深奥に分け入りながらも「まったく未知なものとして、絶対的な驚き」とともに再び映像として蘇らせるオリヴェイラ芸術の真骨頂。
1993年/188分/カラー
監督・脚本:マノエル・ド・オリヴェイラ
原作:アグスティナ・ベッサ=ルイス
撮影:マリオ・バローゾ
出演:レオノール・シルヴェイラ、セシル・サンス・ド・アルバ、ルイス・ミゲル・シントラ
フロベール『ボヴァリー夫人』をもとにポルトガル文学の巨匠アグスティナ・ベッサ=ルイスが原作を執筆。彫琢された言葉の響きとオリヴェイラの完璧な映像が火花を散らす“文芸映画”の最高峰。監督が追求し続ける女性美が、主人公エマを演じるレオノール・シルヴェイラと洗濯女を演じるイザベル・ルトの両極に具現する。
1994年/93分/カラー
監督・脚本:マノエル・ド・オリヴェイラ
撮影:マリオ・バローゾ
出演:ルイス・ミゲル・シントラ、ベアトリス・バタルダ、フィリペ・コショフェル
リスボンの街路を舞台にした群像劇。「すべての私の映画同様、『階段通りの人々』は人生から沸きだした特別な何かだ。それは貧しくて周縁にいる、ほとんど忘れられた人々の目を通した真の人間性のポートレイトだ。これは1920年代の映画、初期映画への回帰を示す映画なのだ」。
1939年2月2日フィゲレイダフォス生まれ。反体制的かつ無信仰的に育つ。63年に奨学金を得て渡英。ロンドン・フィルム・スクールで映画制作を学ぶ。60年代には映画批評誌で健筆を振るう。ラウラ・モランテ主演の『海の花』 À Flor do Mar(86)がサルソ・マッジョーレ映画祭で上映され、審査員特別賞を受賞。 89年に漁色と放縦に走る反-聖人デウスを自ら演じ、映画史上に屹立する傑作『黄色い家の記憶』を完成させる。同作はヴェネツィア国際映画祭の銀獅子賞を獲得し、オリヴェイラに続くポルトガル映画の巨匠として認知される。『ラスト・ダイビング』(92)、『J.W.の腰つき』(97)などの意欲作を次々と発表するも、 2003年2月3日リスボンで惜しまれつつ癌により死去。 03年の『行ったり来たり』Vai e Vem が遺作となる。
1966年リスボン生まれ。監督第一作Idade Maior はベルリン映画祭のフォーラム部門ほか多数の映画祭で受賞。以後、ペドロ・コスタらと共にポルトガルの若手監督として脚光を浴びる。92年の『三人兄弟』 Tres Irmaos では出演 者のマリア・ド・メデイロスがヴェニス映画祭の最優秀女優を獲得している。98年の『オス・ムタンテス』がカンヌ映画祭“ある視点”部門に出品され、国際的な注目を集め、また、ポルトガル国内でも興行的な成功を収める。続く『水と塩』Agua e sal も再びヴェニス映画祭に出品。04年にはドキュメンタリー映画A Favor da Claridade を監督。 『トランス』が五作目に当たる。
2006年/126分/カラー
監督・脚本:テレーザ・ヴィラヴェルデ
撮影:ジョアン・リベイロ
出演:アナ・モレイラ、ヴィクトル・ラコフ、ロビンソン・ステヴニン
サントペテルブルクで暮らしていたソーニャは、より良い暮らしを求めて西ヨーロッパへ向かうが、旅の途中で過酷な現実に直面する。人間の尊厳を奪われる絶望的な状況の中で、奇妙にも、耽美的な夢世界への通路が開かれる。いまポルトガルでもっとも期待される才能のひとりヴィラデルデの野心作。
1972年リスボン生まれ。高等映画演劇学院で学ぶ。96年から00年まではポルトガルのメディアで映画批評を執筆。並行して短編映画を手がけはじめ、オーバーハウゼン映画祭、ベルフォール映画祭で受賞。ロカルノ映画祭、ロッテルダム映画祭、ブエノス・アイレス映画祭、ウィーン映画祭にも出品される。04年に初長篇作品『自分に値する顔』A Cara que Mereces を監督。08年には『私たちの好きな八月』を発表。カンヌ映画祭の監督週間に出品されて絶大な反響を引き起こす。以後、世界40以上の国際映画祭に出品されて幾多の賞を獲得。一躍、世界の映画ファンから注目を集める存在になる。現在、最新作となる『曙光』Auroraを準備中。
2008年/149分/カラー
監督:ミゲル・ゴメス
脚本:ミゲル・ゴメス、マリアナ・リカルド、テルモ・シューロ
撮影:ルイ・ポサス
出演:ソニア・バンデイラ、 ファビオ・オリヴェイラ、ジョアオン・カルヴァリョ
新鋭ミゲル・ゴメスの長篇第二作。ヴァカンス期のポルトガル山間部を舞台に、地元の村人、映画製作チーム、音楽フェスティバルの様子をドキュメンタリー的に描く前半部が、やがていつの間にか、途切れることなく、美しい少年と少女のメロドラマを綴る後半部へと移行する。真夏の夜の夢のような脱ジャンル的秀作。